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2024年1月5日

令和6年 年頭のごあいさつ

まず初めに、この度の令和6年能登半島地震で、お亡くなりになられた方へ哀悼の意を表しますとともに、被災された方へお見舞いを申し上げます。被災地域の一日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。大学では、北陸4県の出身学生が268名おられ、まずは全力を上げて安否確認に取り組んでおり、その後は学生、そして被災地域への大学としての支援を速やかに行なって参りたいと考えております。

それでは改めまして、皆さま明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年を振り返ってみると、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機により全世界でインフレが発生し、日本にもその波は押し寄せ物価が高騰しました。日本の経済活動、そして国民の生活、また私たちの大学運営にも大きな影響を及ぼしたのは、記憶に新しい所です。新型コロナウイルス感染症については、昨年5月に2類から5類へと移行し、人々の移動や交流が活発化しました。特にインバウンドはコロナ禍以前に回復し、日本経済や各地域の経済の活性化に大きく寄与、今年も続くであろうと予想される中、人手不足が懸念されています。また、ChatGPTなどの生成AIが、またたく間に普及し、今後はそのメリットやリスクについて、国内外で広く議論が展開されていくと思います。

私個人的には昨年はスポーツの1年だったと思います。野球では春先のWBCでの日本チームの優勝や、59年ぶりの日本シリーズ関西ダービーと38年ぶりの阪神タイガースの日本一、そして大谷翔平選手の海外での活躍などがありました。プロ野球に限らずサッカー、ラグビー、バスケなどでもグローバルに活躍するチームや選手たちの姿が我々に大きな感動と勇気を与えた1年だったのではないかと思います。

私たちの大学に視点を移しますと、私は昨年4月の理事長就任以降、大阪公立大学はその規模と幅広い専門研究領域を有する総合大学として、その総合力を可視化、活かして、「大阪の成長と発展」 に貢献する、また大阪から世界へとグローバルに発展する大学を創っていこう、そしてそれを実現するため5つの戦略テーマ「①大学の国際競争力強化 ②社会や企業から求められる人づくり ③多様性あふれる魅力ある大学 ④産学官の連携・共創の更なる推進とスタートアップ育成・創出 ⑤都市シンクタンク機能の強化」、プラス1「戦略的情報発信と中長期的なブランド戦略の構築」に全学で取りくんでいこうと、皆さまへ繰り返し呼びかけて参りました。

就任後の9ヶ月間、学長はじめ多くの皆さま方に助けていただきながら走って参りましたが、大学全体が成長に向けて前へ前へと少し動き出したなと感じ、大変嬉しく思っております。これもひとえに多くの皆さま方の多大なるご支援ご協力の賜物でございます。心より御礼と感謝を申し上げます。その大きなものの1つが、昨年12月に採択が決定した「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」です。多くの関係教職員のご尽力のお陰と感じており、重ねてお祝いと御礼を申し上げます。

それ以外にも、研究では2021年2月に設立した大阪国際感染症研究センターの研究活動が本格化し、また理学研究科の藤井 俊博先生らの国際共同研究グループによる「アマテラス粒子の検出成功」や医学研究科の植田 大樹先生や三木 幸雄先生らによる「胸部X線画像によるAI高精度診断モデル」の開発など、国内外で大きな注目を集めました。

また学生の活躍では、高専ろぼっと倶楽部が高専ロボコン2023全国大会にて、初の日本一に。大学硬式野球部も神宮球場で行われた全国大会への進出を果たしました。学生のベンチャーやスタートアップに目を向けますと、大阪公立大学発・学生ベンチャー第1号として大阪市立大学生の藤川 翔帆さんが「株式会社ロジグリッシュ」を昨年2月に創業。また秋には、昨年8月に創業した「takeforest株式会社」の代表で、大阪府立大学生の竹森 洸征さんが「世界学生起業アワード」大阪大会で1位となり、今年の2月に日本大会に進出されます。

このように、教職員や学生の皆さま方が、研究・教育・社会貢献などの様々な場面、様々なステージでご活躍されており、理事長としても大変喜しく、誇りに思っております。今後もぜひ、多くの皆さま方のご活躍を期待しております。

そしていよいよ本日から、2024年がスタートします。今年の干支は「辰」。大変縁起の良い干支と言われ、あらゆる物事が成長し、上昇気流に乗って良い方向へ進むと言われています。辰巳砂学長のお名前にある「辰」でもあり、私たちもこの辰年の勢いにあやかって元気に頑張っていきたいと思います

今年の日本経済は、DXやGXへの官民あげての積極的な投資やインバウンドを含めた個人消費活動等により緩やかな成長が見込まれています。大阪・関西では、この春にいよいよ大阪・関西万博の開幕1年前を迎えます。私たちも開催地の地元大学として、ぜひ成功に向けての機運醸成に取り組んでいきたいと考えております。また、飯田グループホールディングス様との共同パビリオン出展や、万博開催期間中、特に夏場の熱中症対策等への救護サポートやボランティアリーダーの育成、さらに学生たち若い世代の万博参画など様々な事をサポートし、万博成功に向けて取り組んでいきたいと存じます。

一方、大学では2024年以降、各キャンパスにおける新棟などの建設・開設が続きます。中百舌鳥キャンパスでは工学部新棟と新センター棟が、杉本キャンパスでは理学部新棟が、今春2024年4月に開設いたします。また阿倍野キャンパスでは看護学部の新棟が、りんくうキャンパスではBSL(バイオセーフティレベル)3の研究施設が、来年2025年4月に開設する予定です。そして2025年秋にはいよいよ、「森之宮キャンパス」が新たに開設いたします。このキャンパスは約6,000人の学生・教職員が集う「教育の拠点」であると共に、イノベーションアカデミー事業と都市シンクタンク機能のヘッドクオーター機能を担う予定で、現在順調に建設が進んでおります。

次に、前述した「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」は、向こう5年間で最大約55億円程度という大きな規模の事業です。この事業を着実に推進するため、また後述するOMU戦略予算事業も併せ含めて、法人・大学が一体となって、きっちりとPDCAを回せる仕組みや推進組織を、皆さまとよく相談させていただきながらこの4月に立ち上げたいと考えております。ご協力のほど、何とぞよろしくお願いいたします。

また、前述のOMU戦略予算事業は来年度2024年度から年間5億円、向こう5年間で合計25億円の成長に向けての戦略投資予算です。5つの戦略テーマ・プラス1 (詳細は前述)に「DX」と「入試」を加えた 7つの戦略テーマについて、昨年11月に各責任者の皆さまから具体的な取り組み内容をお聞きし、12月には役員間でも議論を連ね、ほぼ内定している状況です。次年度からいよいよスタートします。7戦略テーマそれぞれを担当する、理事、副学長、関係教職員の皆さま方の力強い推進を期待しています。

具体的な取り組み概要を3つご紹介いたします。

1つ目は「大学の国際競争力強化」についてです。まずは外国人研究者や留学生を増やし、今後5年間で短期留学も含めた実数を現状から倍増させることにチャレンジいたします。また先生方の事務業務を軽減するため本年4月に国際事務センターを新設するとともに、外国人用の宿泊施設を2027年春に、杉本キャンパス内に新設する予定です。さらに、研究論文の海外に向けた戦略的発信を強化していきます。大学にとって、国際的な研究や社会の発展に貢献する研究など様々ありますが、これら研究力の強化は非常に重要と改めて感じております。この研究力強化および戦略的海外発信は大学の本丸であり生命線だと考えております。

2024年度を「大阪公立大学の国際化元年」と位置づけ、取り組みを通じて外国人研究者・留学生から「選ばれる大学」となり、そして国際化によってキャンパスの風景を変えていきたいと思います。

2つ目は「産学官の連携・共創の更なる推進とスタートアップ育成・創出」についてです。これまでイノベーションアカデミー事業を中心に取り組んでいただいておりますが、更に強化・推進するためこの4月に「産学官共創本部(仮称)」を新設したいと考えています。研究成果の出口の戦略的多様化を図り、実証実験を通じて社会実装へとつなげ、産業界との共創を深めていきます。加えて、総合知の強みを発揮するため、学外との連携はもとより学内においても医・工や医・獣の連携、医・工・獣・農などの分野連携を推進します。

スタートアップについては、昨年までで5件起業、現在も10件を超える方々が創業を準備されており大変心強く思っています。これらをサポートする「スタートアップ支援室」をこの4月に新設すると共に、URA(University Research Administrator)についても第3の職種として認定し体制強化し、また知財関連の推進体制強化も図ってまいります。

3つ目は「都市シンクタンク機能の強化」についてです。本年9月に森之宮で、大学と行政と民間等で協働して「オープンラボ」を新設します。あわせて様々な人が集う「イノベーションラウンジ」も開設したいと思います。そして来年秋の森之宮新キャンパスの開設に併せて本格的なラボを設置し、「都市シンクタンク機能」を強化したいと考えております。

これらのような各種取り組みと並行して、来年2025年4月からは新たな「第2期中期計画」がスタートします。現在は策定プロジェクトを立ちあげた所です。皆さま方のご意見をお聞きする場も設けさせていただきますので、積極的なご意見・ご協力をよろしくお願いいたします。

1月13日からは、大学入試シーズンがスタートします。受験生にとっては人生を左右する大切な出来事となりますので、ご心労をおかけしますが入試関連を担当される教職員の皆さまには万全の体制で取り組んでいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

これらお話ししたように、2024年は「大学の成長と発展」に向けて様々なことが動き出していくスタートの年でもあります。本年の干支である「辰」のように、大きく飛躍する1年にして参りたいと思っております。私自身も「対話と挑戦」を信条に、皆さま方と一緒に、前を向いて、明るく元気に楽しく、頑張って参りたいと考えておりますので、皆さま方の更なるご支援、ご協力をお願いしまして、私からの年頭に当たってのご挨拶とさせていただきます。

本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

写真:福島理事長

公立大学法人大阪 理事長
福島 伸一